以前にも、このコラムで書いたが、私はテレビで保護猫や保護犬の預かり訓練等のコーナーが大好きだ。ケージから一歩も外に出ようとしない犬や猫、人の気配が消えてようやく恐る恐るケージの外に出るも、すぐに引き返してしまう。預かってくれるボランティアの方も少しづつ人に慣れてもらう他ないのだが、人間目線でいうと「そんなに怖がらなくても、もう大丈夫なんだよ!安心して出ておいで・・・」という気持ちなのだと思うが、犬や猫の目線からしたら、これまで劣悪な環境であったり、必ずしも優しい人間に飼われていた訳ではないので、人間に対する不信感や恐怖感はそう簡単に拭えるものではない。

◆こうした目線の違いは、何も動物と人間の間だけではない。人間同士でも立場や環境によって、意見は大きく異なる。今まさに、世界中がある一カ所に注目している事も、それぞれの立場(目線)で主張があってのことだと思う。話を人間と動物に戻すが、動物を捕獲するための捕獲器に何を求めるか?動物目線で言うと、綺麗にメッキされた状態よりもむしろ中古のような使用感のあるものや少しサビのある物の方が、動物の警戒心も弱まるので即戦力の捕獲器と言える。しかし、人間目線で言うと、新品で購入したのに、サビてるとは何事だ!と考える人も多いし、ずっと綺麗なままであって欲しいとこまめにサビ止めをする人もいる。しかし、こまめにサビ止めをすると、逆に薬品の匂いがついてしまうことで動物が近寄らなく可能性もある。

◆そもそも鉄はなぜサビるのか?「チコちゃんに叱られる!!」(NHK)でも取り上げられたこの問いに対してのチコちゃんの回答は「(鉄が)サビたがっているから」というものだった。鉄は、元々酸化鉄という赤茶色の状態で存在している。それを採掘し、製鉄する段階で人の手で無理やり酸素を取り除くことで『鉄』となる。取り除いた酸素が、どうしてもう一度鉄と結びついてしまうのか?それは鉄単体の姿でいるよりも、酸素と結びついた酸化鉄という本来ある状態の方が、鉄という物質としての安定性がより高まるというのが理由らしい。つまり、鉄は酸素と一緒に常にいてサビていたいというのが鉄目線の意見ということだ。

◆話を元に戻すと、動物にとってサビがある方が警戒心が弱まる理由は、それが自然だからなのではないか。捕獲器を長く使い続けてもらうためには、サビが少ない方が長持ちする。使用しない時は、きちんと雨などが当たらない所で保管していただく事が望ましいし、外にほったらかしにしていてはさすがに支障が生じる。ただ、サビたからといってすぐに使い物にならなくなるわけではない。耐用年数は製品毎に異なるが、全体が赤茶色になっても使い続けている方もいらっしゃる。弊社では、製造も行っているので万が一壊れた場合でも、壊れた箇所のみの修理も可能だし、消耗品である部品については別途部品の販売も行っている。なので、安心して思う存分使っていただきたい。そして、捕獲器にサビが出てきた時はこう思ってもらいたい。「捕獲器が自然に溶け込もうとしている。捕獲器が自ら進化しようとしている」と。ここまで妄想を膨らませると、サビという状態もどこか今までと見え方が違っては来ないだろうか?少し目線を変えるだけで見え方が変わる。どこかの国のTOPにも早く目線を変えて欲しいものだとつくづく思う。

(こうじ)