動物による農作物被害・家屋被害が後を絶たない。背景には、様々な要因が考えられるため、対策として一筋縄ではいかないことが予測される。とはいえ、農家の方が被る被害は計り知れないし、趣味として家庭菜園やガーデニングを楽しんでいる方々にとっても由々しき問題であることに間違いはないだろう。自治体も捕獲器の貸し出しや鳥獣被害対策に注力するようになったとはいえ、年々増加する分を抑える程度で中々根本的な解決に至っていないのが現状と言える。

◆動物を捕まえるのは、猟師の仕事というのは一昔前の話。今は、一般の方でも狩猟免許を取得する方が増加している。特に、農家の方が自衛手段として狩猟免許を取得し、自ら捕獲器を仕掛けて動物を捕らえようとする方が多くなっている(これは「コラム:VOL.4 狩猟免許」でも書いた話)。狩猟免許の取得試験には、関連する法律も出題範囲のため、捕獲に関する最低限度の法律知識も必要とされる「狩猟として動物を捕獲する場合」「有害鳥獣として許可を受けて動物を捕獲する場合」何れも自治体への届け出が必要なことは、狩猟免許をお持ちの方なら既にご存じと思う。

◆以前、農作物被害に合われている農家さんとお電話でお話しした。イノシシにやられているので、自分でイノシシを捕まえるのにイノシシ用の大型の檻が欲しいという内容だった。狩猟免許はお持ちなのか確認すると持っていないとのことだったので、原則狩猟免許が必要であることやお住まいの自治体に許可を取らないと捕獲できない事などを伝えると興奮した口調で「こちらは死活問題なんだ。免許とか許可なんて言ってられないんだ!」との返答だった。それだけ、切羽詰まった状況だったのだと思うが、イノシシを捕まえた後の処分方法や猟師の方でもイノシシで大怪我や最悪の場合は命を落としてしまうこともあること等を伝え、まずは一度お住まいの自治体にご相談されることをおすすめした。最後は理解していただけ「自治体に相談に行ってみる」という話になった。

◆これは、イノシシだったから、大怪我の可能性があるから免許や許可が必要なのだという話ではない。例え、小型の動物であっても狩猟免許や捕獲の許可申請は原則必要だ(*1)。自宅の敷地内だから必要ないというのも間違いだ。この辺りを誤解されている方が多いし、ホームセンター等でも捕獲器を置いている所が多いが、きちんとこの辺りまでお客様にご案内した上で、販売していただくべきだと個人的に思う。こうした法律や許可申請等は、難しいし分かりにくい面もあるが何故わざわざそうしたものがあるのか?を考えると、事故や怪我と言った危険性やリスクがあるからだと思う。法令遵守という点でいうと、つい最近も法律やルールを軽んじたことによって大勢の方が犠牲になった痛ましい海難事故があったばかりだ。この事故以外にも法令さえ守っていれば、防げたかもしれない事故が後を絶たない。そうならないためにも、正しい手続きを行って正しく捕獲器を使用していただきたい。

*1 ハツカネズミ、ドブネズミ、クマネズミといったネズミは、公衆衛生上の観点から狩猟免許や捕獲許可申請等が無くとも捕獲できます。

 

(こうじ)