人類の歴史は、ウイルスとの戦いといっても過言ではない。世界的流行の歴史を振り返ると天然痘、コレラ、マラリア、スペインかぜ(インフルエンザ)等など数多い。日本国内だけでも、幾度となくウイルスの流行が繰り返されてきた訳だが、13世紀の中国や14世紀のヨーロッパの人口を半減させたと言われるペスト(黒死病)が、日本で流行したという記録は見当たらないという。奇しくも、13世紀の元寇の襲来後、大陸と交流をしていなかったことが功を奏したようである。今も昔も外出を控えたり、人流を制限することがウイルスとの戦いには重要の様だ。

◆外から持ち込まれるものとして問題になっているものがウイルス以外にもある。それが外来種の問題だ。外来種とは、環境省のホームページによると「本来その地域にはいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物」を指す。逆に、古くから日本に存在する種は、在来種。また、日本にしかいない種は、日本固有種と呼ばれる。特に日本は島国という地理的な要因もあり固有種が数多く存在している。そうした外来の動物の増加が古くからの生態系を壊したり、農作物の被害をもたらしてしまっているのが今、大きな問題となっている。

◆外来種の問題については、2005年に施行された外来生物法において「問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこと」と定められており、現在156種類の動物が特定外来生物に指定されている。弊社の扱う捕獲器は、主にこうした特定外来生物や在来種であっても自治体によって有害鳥獣として指定された動物を捕獲するための道具を製造している。

◆外から入ってくるという意味でウイルスと同じといったが、外来種の中には様々な理由で人間が持ち込んだものも少なくない。例えば、飼育(ペット)目的、食用目的、毛皮の商用目的といったように理由は様々である。これらの動物がその後どうなったかと言うと、子供の頃は可愛いが大人になると凶暴で飼いきれなくなったり、食用・商用という当初の目的としての価値が低くなったりで手放された個体が自然繁殖等で定着していったという経緯がある。つまり、外来種の問題の一端に人間が大きく起因していると言える。

◆特定外来生物のアライグマを例にすると、既に定着・繁殖の段階をとうに超えている。アライグマの天敵は、オオカミやワシミミズク等の大型の肉食動物と言われているが、そういった天敵が日本にいないため生息域の拡大や頭数は増加の一途である。今、被害が無いから大丈夫と思っていても、被害が顕在化するころにはもう手遅れともいえる。なんにせよ対策は早めの方が良い。また、動物の捕獲には、強いメンタルも必要だ。外来生物法にもある様に「捕獲=殺処分」が前提だ。可哀そうだからと飼う(飼養)や遠い所に捨てに行く(運搬)は禁止されている。実際、捕獲した動物を見ると可愛いし、農作物の被害を受けた人であっても捕獲後の殺処分が出来ない人が多くいる。それは、心のどこかで動物には罪が無いことを知っているからだ。当社が目指すのは、こうした特定外来生物や有害鳥獣の根絶ではない。一旦、増えすぎた頭数を調整し管理できるまでにしましょう。その上で動物と人間が共存共生していける環境を整えましょうというのが理想だ。まだ、理想には程遠い状況だが、Withコロナの時代が来るようにWithアライグマの時代もきっと来るはずだ。

(こうじ)